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beyond global共催セミナーレポート<前編>

2020年11月に開催されたbeyond global社との共催ウェビナー「ニューノーマル時代の個人と組織の在り方を問う」から、興味深かった議論を前・後編にわけてご紹介します。

ウェビナーの開催概要はこちらをご参照ください。

パネリスト:本間浩輔(Zホールディングス株式会社)/中村優子(Procter & Gamble)/森田英一(beyond globalグループ)/日髙達生(楽天ピープル&カルチャー研究所)

ゲストパネリストの各社の取り組み(一例)

ゲストパネリストとして登壇いただいたZホールディング本間氏、Procter & Gamble (以下P&G)中村氏より両社の象徴的な取り組みについてご紹介いただきました。

本間氏:(Yahooでの取組として)Chief Conditioning Officerと「どこでもオフィス」を紹介する プロスポーツの世界では、ほんの数パーセントの差が、戦力外となるか1億円プレイヤーになるかの明暗を分ける。一方、ビジネスの世界では多少コンディションが悪くても会社に来れば報酬がもらえる。ビジネスのプロとしてそれはまずいということで、各人がコンディションを整えることを推進する役職として「Chief Conditioning Officer(CCO)」を設置した。

「どこでもオフィス」はそのCCO推進施策の一環で、各自が最も効率の良い場所を選択してよいというもの。自律的に個人が自身のパフォーマンスが上がる場所を選ぶことを推進している。

中村氏:健康な社員からでないとイノベーションは生まれない、社員のウェルネスはマネージャーの責任という考えが徹底されている。 

社内では長期的目線の重要性が共有されており、社員のウェルネスはマネージャーの責任。したがって「会社や直属の上司がワークライフバランスを支援してくれるか」、「仕事後に十分にエネルギーが残っているか」などを従業員に問い、マネージャーのスコアカードとして提示される。

たとえ一時的に成果は上がっていても、従業員が疲弊している部門は、社内異動にて従業員が異動したがらないなど中長期的には不健康な組織とみなされ、該当部門のマネージャーには是正勧告が出るケースもある。

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YahooのCCOはまさにウェルビーイングを推進する要職と言えます。またP&Gではメンバーのウェルビーイングをサポートすることが全マネジャーの仕事に組み込まれています。ロール設計を工夫しウェルビーイング向上を目指す好例と言えます。

リモートワークと生産性

コロナ禍での働き方の変化に焦点をあてた議論です。各社の拠り所となった「考え方」に、ご注目ください。

森田氏:リモートワークと生産性。部下がリモートワークでさぼっているかいないか、現場には懸念がなかったか?

中村氏:P&Gは完全に成果主義。ひとりひとりやっていることが違い、管理職は厳密にはタスク管理をしない。

リモートで生産性の高い人が、1時間で10人分の仕事をし、その後昼寝をしていても、会社としては問題ない。むしろ「パワーナップ」は奨励されている。さぼるのがダメ、というマインドに違和感がある。たとえば研究職の人が10の実験で結果を出すより、効率的に3つの実験で同じまたはそれ以上の成果を出せる人の方が評価されるべきである。

森田氏:コロナ禍による働き方の変化はあったか?

本間氏:ある。働く人がもっと幸せになれるようにというのはコロナ禍に関わらず、これまでの「働き方改革」以来の取り組みの延長にある。企業はコロナ禍を基点により思い切って働き方を変えるべきであり、もともとの流れが加速したとの認識。

中村氏:元々週1ほどの在宅勤務だったが、ロックダウン中に10 0%になりチャレンジングだった。集中しすぎてしまう、在宅環境が適していない、外に出ない・人に会わないストレスなどの声があがった。

また、状況改善後のために有給をセーブし、8月末時点で社員の8割が3日以上連続の有給をとっておらず、リフレッシュができていない状況があった。

これを受け、下記3点を基本的な考えとして、最近は50%ターゲットに会社に出社することを奨励。皆に会えて楽しいという声も多数聞かれた。

  1. 企業への所属意識が下がってきている、社員がストレスを感じている状況をどう解消するか(自由度を保ちつつ、成果主義を保つ)
  2. 偶発的なコミュニケーションが、イノベーション、研究には特に大切
  3. 新規入社者は人に会わなければ育ちづらい

「会社に来ると楽しい」という環境づくりのため、オフィスの綺麗な景色を撮る写真コンテストや、おいしいアイスを午後に無料提供、万歩計による歩数の競争大会などの施策を打っている。結果、現状は(11月以降)毎日、7割程度は出社している。

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社員の状況把握と、判断基準の明確化。これらを踏まえてスピーディに施策を打つことで、従業員のウェルビーイングを確保しようとする姿勢に多くの示唆がありました。