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人的資本の情報開示、ついに義務化!米SECが8月末に発表

米国証券取引委員会(SEC)は今年8月、上場企業に対し「人的資本の情報開示」を義務づけると発表。

Human Capital Onlineの記事では、投資家が人的資本を投資基準に組み込む背景と、企業側の論理が説明されています。本件について、楽天でESG指標などの非財務情報の開示を担当するサステナビリティ部の宮本に、解説をしてもらいました。

解説①「人的資本の情報開示」は世界的な潮流。日本も例外ではない

実際に日本では、金融庁と東京証券取引所が中心となって取りまとめた、実効的なコーポレートガバナンスを実現するための主要な原則である「コーポレートガバナンスコード」がありますが、上場企業は、このコードの原則に遵守することが求められており、この原則の事項について「コーポレートガバナンス報告書」にて開示を行うこととなっています。

本コードには、人的資本に関わる項目として、女性の活躍推進を含む社内の多様性の確保や、ガバナンスや社会・環境問題に関する事項である非財務情報について、法令に基づく開示はもとより、それ以外の情報提供にも主体的に取り組むべきであると規定されています。

解説② 統合報告書の主流化

近年は、損益計算書や貸借対照表等を中心とした財務情報だけでなく、経営理念やビジョン、人材マネジメントや、環境・社会へのインパクトなどいわゆる非財務情報もまとめた「統合報告書」が、企業の年次会計報告書の主流となってきています。

KPMGジャパンの調査によると、調査開始当時(2014年)の統合報告書の発行企業数は135社でしたが、2019年には513社となりました。東証一部上場企業における発行企業の割合は、時価総額(19年12月末時点)で見ると、66%にも上ります。

このように、日本を代表する企業の多くが人的資産を含む非財務情報の開示の重要性を認識するようになり、統合報告書を発行していることが分かります。

解説③ 新型コロナウィルス感染症拡大による人的資本開示の加速

今年の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、企業には人的資本の開示がより一層求められていると感じています。

投資家の皆様との面談でも、昨年と比較して従業員満足度や離職率、従業員のエンゲージメントや働き方、残業時間や研修など、人的資本についての質問を頂くことが増えています。

コロナの影響を乗り越え、コロナ収束後も一層成長できるレジリエントで持続可能な企業を見極めるにあたり、投資家は企業の人的資本に今まで以上に着目していると言えるでしょう。

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いかがでしたでしょうか。

「ヒト」にかかわる非財務情報は、結果指標としての財務指標を占うための、先行指標の1つとして注目が高まっていると言えるでしょう。今後、日本でも各社の開示動向に注目したいものです。