今年4月に『深い集中を取り戻せ 集中の超プロがたどり着いた、ハックより瞑想より大事なこと』を上梓した、株式会社ジンズホールディングス執行役員兼株式会社Think Lab取締役の井上一鷹氏。
ご著書の中では、楽天ピープル&カルチャー研究所が提唱する「コレクティブ・ウェルビーイング 三間(さんま)と余白」も紹介されています。
現代人が深い集中を取り戻すためにはどうすればよいか?今回はそのエッセンスの一部をご紹介します。
もっとも集中ができない場所とは?
1つのことを深く集中して考えるためには、準備段階だけで23分かかると言われています。それなのに現代人は、11分に1回は人から話しかけられたり、メールやチャットの着信音によって、集中するまでの23分を脅かされているのです。
また、私たちの研究では、さらに衝撃的なことがわかりました。それは、人がもっとも集中できない場所が、じつは「オフィス」だったということです。
我々の集中の邪魔をするのは、もっぱら「同僚」と「スマホ」で、オフィスでは仕事について1人で深く考えることすらできません。同時に2つ以上の課題を処理できない脳を持つのに、こうした課題に向き合わずに、なんとなく「労働時間を削減しなきゃ」と、漠然と進めてきた結果が、この数年ずっとやってきた「働き方改革」というものでした。
仕事のアウトプットは、「時間×パフォーマンス」です。自分がより「パフォーマンス」を発揮できる空間を知ることが、今後のデキる人の条件になるでしょう。
切り替えることの重要性
「集中力」という言葉がよく使われます。「自分には集中力がない」「最近、集中力が落ちてきた」など、とても便利な言葉ですが、そこにはさまざまな意味が込められています。
まずは、「集中力」の要素を分解してみましょう。
・立ち上げ速度(「よし、やるぞ」)
・集中の深さ(「集中できてきたな……」)
・集中の持続力(「まだまだいけそうだ……」)
集中力は、この3つに分けることができます。
私たちが行ったアンケート調査では、多くの人は「立ち上げ速度」で悩んでいました。みなさんも、仕事を始めるまではすごく嫌でやりたくない気持ちでいるのに、いざ始めてしまうと、そんなに嫌じゃなくなってくる感覚はないでしょうか。人の脳は、切り替えるタイミングには負荷がかかりますが、作業をし始めてしまうとあまりつらくなくなるものです。
在宅勤務などでは、プライベートと仕事を同じ空間で行うために、その切り替えの悩みが根深いと思います。この切り替えには、時間を定め、「ルーティン」と呼ばれるような仕組みを持つことが重要です。
リソース配分を決める
“働き方を考えられるのは、生き方を決めた人間である。「ワークとセルフとリレーション」の割合と、それぞれのリソースを、自分が本当に大事に思っているものに向けられているか。それを問え。”
まず3つの概念を押さえておきましょう。
・ワーク:仕事に集中する時間
・セルフ:自分1人の時間
・リレーション:家族や友人などと過ごす時間
この3つは、どれか1つが重要だという話ではなく、3つすべてが必要であり、すべてに意識的に時間を振り分けるのが大事だということです。
私の場合、次のようにリソースを割くようにしています。
「ワーク」は、仕事過多ではあるものの、1日10時間程度に抑える。
「セルフ」は、仕事が趣味のような生活ではあるのですが、中古マンションを購入して、リノベーションして過ごす。
「リレーション」は、飲み会や会食は徐々に減らし、身近な人との時間を増やす。
こうして決めておくだけで、日々の過ごし方が変わってきます。この3つの分け方は、在宅勤務だけにかかわらず、人生において大事な考え方なので、是非一度、振り返ってみてはいかがでしょうか。
※本記事は井上一鷹氏にご寄稿いただき、掲載しています。
参考リンク
・井上一鷹『深い集中を取り戻せ 集中の超プロがたどり着いた、ハックより瞑想より大事なこと』