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beyond global共催セミナーレポート<後編>

2020年11月に開催されたbeyond global社との共催ウェビナー「ニューノーマル時代の個人と組織の在り方を問う」から、興味深かった議論を前・後編にわけてご紹介するシリーズの後編です。

ウェビナーの開催概要はこちらをご参照ください。

パネリスト:本間浩輔(Zホールディングス株式会社)/中村優子(Procter & Gamble)/森田英一(beyond globalグループ)/日髙達生(楽天ピープル&カルチャー研究所) 

ウェルビーイングと競争力

ウェルビーイングを推進していて、急成長企業と伍せるのか、この疑問に答えます。 自社の成長ステージや市場環境にあった企業戦略、それと整合がとれた人材戦略が鍵となります。各論や施策論に流されることなく、自社の状況を見極めることが肝要です。 

―森田氏:アリババのようなモーレツな勢いで働く中国企業を相手に、日本企業はウェルビーイングを推進していて勝てるのか?

本間氏:競争優位の源泉に何があり、どこを目指すかの設定が必要。GAFAなどは、Winner takes allという世界で戦っており、そこに優秀な人材を投入している。たとえば、寝ないで働いて、得られるものがあるならばやればよいと思う。 ただし、働き方改革で他社が働かないから自社も働かない、もしくは、他社が頑張っているから自社も働く、という考えには慎重になるべき。企業競争力とは何なのか?戦略、ビジョン、戦い方があったうえでの各論、手法論である。

中村氏:ある一定の年代の猛烈に働きたい人を集め、常にそういう人材を採り続ける、そしてついて来られない人は辞めてもらうというのも、一つの企業としての戦略でありだと思う。 当社はダイバーシティが戦略である。世界中から集まった多様性に富んだ心身ともに健康な仲間たちと、自由と高い成果の要求を組み合わせることで、持続的な生産性を求める。それにすべての制度を整合させる。

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ウェルビーイングを推進する上でのロジックとして、企業理念・事業戦略・人材戦略のロジックが重要との本質的な指摘が印象的でした。良い悪いという相対的なものではなく、自社にあったウェルビーイングの最適解を自問自答する必要がありそうです。

トップの巻き込みと個人の自立性

ウェルビーイングを推進していく上で欠かせない、トップの巻き込みや個人の自立性に関する議論です。

森田氏:(ウェルビーイングは)トップダウンかボトムアップ、どちらで推進すべきか?

本間氏:トップの仕事は、やること、やらないことを決めること。トップが優先順位付けすべきである。特に日系企業でのウェルビーイングのコンセプト推進にいては、下記3点がポイントだと考える。

1. 納得度の高い評価ができることが前提である

2.金銭的利益だけでなく、世の中への貢献、社員を大切にする会社が選ばれる。利益でなく優秀な人材獲得のために必要となる

3.納得できる報酬があり、いい仲間がいて、いい仕事ができる、という会社が選ばれていくのではないか

―森田氏:人材の自律性について。自律度が低い社員に対しどう対処すべきか?

中村氏:まず採用の時点でスクリーニングすべき。当社ではパフォーマンス・インプルーブメント・プラン通じて支援し、それでも当社の価値基準でのパフォーマンスが上がらない場合、より本人に合った職業、他社への転職を推奨している。社員の自主性に任せる当社では、どのポジションにも自己管理能力が低い人がいない状態を作っていく必要がある。辞めたとしても、当社での経験から次によりよいキャリアを見つけ、結果的にキャリアアップしている人がほとんどである。

―森田氏:経営者を巻き込んだり説得するためのポイントは何か?

本間氏:トップに過度に期待するより自ら現場でムーブメントを起こしてしまう方が説得力があると思う。自身の場合、人事部にいたときに、50~60程度の施策を実施。失敗もたくさんあった。その時の会社が必要としているものに合わせて、まずは自分の組織から変えていくのがよいのではないか。

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各社にあてはまる絶対的な正解はない中で、自社の事業戦略や人材戦略を踏まえ、半径数メートルの身近なところから変化を起こしていくことが重要という指摘は、多くの参加者から支持を得ていました。