Column

バレーボール・JTマーヴェラスをVリーグ2連覇に導いた「立て直す力」

 今年2月に『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』を上梓した、ピープル&カルチャー研究所アドバイザーを務める中竹竜二氏。「ウィニングカルチャー」は楽天ピープル&カルチャー研究所の研究テーマの一つでもあり、F Cバルセロナをはじめとする世界の常勝チームに共通するエッセンスについて、度々議論を重ねてきました。

 勝ちぐせのある強い組織文化はどのようにつくりだすのか。中竹さんはダイヤモンドオンラインで、「中竹竜二のウィニングカルチャー」を連載中です。今回は、バレーボール・JTマーヴェラスの「立て直す力」に関する記事をご紹介します。


 2月21日、バレーボールのVリーグ女子の決勝戦で、JTマーヴェラスが東レアローズを下して優勝し、見事に2連覇しました。

 実は私はここ数年、JTマーヴェラスをサポートしており、彼女たちの快挙を心からうれしく感じています。同時に、JTマーヴェラスには確実に「ウィニングカルチャー」があると確信することもできました。

 JTマーヴェラスに宿る「ウィニングカルチャー」とは何か。いろいろな要素がありますが、大きな要素の一つが「立て直す力」です。

 あなたには「立て直す力」がありますか? そもそも「立て直す力」とは何だと思いますか? ウィニングカルチャーの実現にも大切な「立て直す力」について、今回は議論を深めたいと思います。

 今シーズンはコロナ禍という状況の中で、バレーボールの世界でも、どのチームも十分な練習がままならないような環境でした。そんな中でもJTマーヴェラスは接戦をものにして優勝を獲得しました。

 Vリーグの場合、準決勝戦と決勝戦で、連日試合をしなくてはなりません。

 JTマーヴェラスは準決勝でフルセットを戦っていました。それも最初に連続2セットを取ったものの、次は2セットを立て続けに奪われ、完全に相手側に勢いのある中で、かろうじて最後の5セット目を取って、決勝戦へ進みました。

 苦しい状況の中で何とかもぎ取った決勝戦進出のチケット。それも苦戦したことで、いったんは崩れたチームを立て直し、翌日の決勝戦に臨まなくてはなりませんでした。

 決勝で当たる東レアローズは今シーズン無敗という最強集団です。これまでの試合は全勝を収め、準決勝も3セットストレート勝ちで決勝戦に進んできています。苦戦の末、かろうじて決勝戦へのチケットを獲得したJTマーヴェラスとは、肉体的にも精神的にも大きな違いがありました。

 そんな状況の中で、JTマーヴェラスは東レアローズとの決勝戦に挑みました。しかし、試合の様子を見ていると、私はJTマーヴェラスが「大人のチームだな」という印象を受けました。

 そもそもスポーツの世界では、決勝ともなるとどんなチームも思い通りに試合が進むことはありません。だからこそ、うまくいかないときにどう立て直すのかが重要になるのです。

 「思い通りにならないときこそ、自分たちがしてきたことを信じよう」とよく言われます。JTマーヴェラスの試合運びもまさにその言葉の通りでした。

 私自身、シーズンを通してコミュニケーションを図る中で、吉原知子監督も小幡真子キャプテンも、精神的な強さを持っていると感じていました。その強さとは「自分たちのやってきたことを信じて、己に勝てば必ず試合に勝てると信じる強さを持っている」ということです。

 思い通りにいかない事実を受け入れること

 「立て直す力」は、最近では「レジリエンス」などとも言われ、海外では人材育成や自己認識などの世界でも研究が進んでいます。

 ビジネスの世界でも、リーダーや責任者になるなどポジションが上がるほど、思い通りにいかないことは増えていきます。厳しい壁や障害に直面することも多くなります。

 思い通りにできないときや調子が崩れたとき、どのように立て直して自分を戻していくのかは、リーダーにとってもチームにとっても重要なテーマとなります。ここで大切なのは、「思い通りにいかないという揺らぎを受け入れること」。これが立て直す力の本質、いわばウィニングカルチャーの要因の一つなのです。

 私自身はバレーボールに詳しいわけではありません。それでも試合を観戦していて、JTマーヴェラスの強さに心から感動したのは、ミスをした後の切り替えにありました。

 当然、ミスがあれば修正しなくてはなりません。その時にクヨクヨしないことが大切なのです。パっと気持ちを切り替えて次に向かうこと。

 人間はどうしても過去の後悔と未来の不安に大半の意識を向けてしまうものです。しかし、JTマーヴェラスにはそれがなかったのです。

 今回、JTマーヴェラスは準決勝の大切なシーンで、せっかく点を入れたのにノーカウントになるという、パプニングとも言える事態に直面しました。普通なら、怒りやいらだちの感情が湧き上がるシーンです。

 しかしそこで、コートに立つ選手たちは、誰よりも早く気持ちを切り替えて、「次にいこう」と声を掛け合っていたのです。

 自分たちがコントロールできるところだけを見つめて、立て直していく。

 集中のベクトルを、他者や過去といった思うようにならない事態に向けるのではなく、自分たちに向けて、自分たちがコントロールできる範囲で状況を立て直していきました。外部で起こるすべての事象を素直に受け止め、自分たちのプレーの精度を高めることに集中できたのです。

 これが本当の強さです。なぜならそこには勇気が必要だからです。何かと言い訳できる要素をすべて捨てて、前を向くこと。実際、JTマーヴェラスのコート内では「勇気」という掛け声が飛んでいました。

 人間は思うように物事が進まないときほど、つい誰かを責めたりしがちです。自分たちがコントロールできない外的要因に執着してしまうものです。

 しかし、大切な状況だからこそ自分たちがコントロールできるものに着目すること。それは確実に、自分の中にあるものです。過去ではなく、未来に向けて今、どのように立て直していくのか。崩れることが当たり前だからこそ、どのように立て直していくかという姿勢が勝負のカギを握るのです。

 これはきっと、スポーツの世界だけでなく、ビジネスの世界でも、プライベートの世界でも同じではないでしょうか。

 思うようにならない現実を受け入れてから「立て直す力」こそ、ウィニングカルチャーに必要な要素である。改めて、JTマーヴェラスの優勝を見て、その重要性を学び直しました。ほかにも、私の最新作『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、強いチームになるための組織文化の「知り方」や「変え方」についてさまざまな方法をお伝えしています。

 あなたも、立て直す力を養ってみませんか。


※本記事はDIAMOND onlineに連載中の「中竹竜二のウィニングカルチャー」より、ダイヤモンド社の転載許可を得た記事について掲載しています。

オリジナル記事はこちらからご覧いただけます。